新耐震基準(グレーゾーン)の中古住宅の改修
平成元年に建築された住宅は、1981年~2000年の間のグレーゾーンの建築とも呼ばれます。
旧耐震基準と比べ筋交の数量が比較的多い為、旧耐震基準の建築物ほど弱くはないのですが、柱や梁を結ぶ金物が不足しているため、現在の建築物ほど強くもないものが多い・・・そのようなイメージです。
そのようなイメージからすると「曖昧さ」が不安になってしまいますが、現状をできる限り明らかにして、進めることにしました。
そのため診断時における調査、設計開始時における再調査、そして設計中の再々調査、工事中の調査結果の見直し(調査時には調べきれなかった箇所)を積み重ねていきました。
建築データ
築年数:約32年
床面積;110.94㎡
構造:1階木造、2階木造
改修内容:全面改修工事(補強工事含む)
地域;東京都東大和市
設計費:35万円、工事監理費:50万円、工事金額:1014万円
ご要望と企画
・フラット35を使用するため、耐震適合証明書が発行できる仕様にしたい。
・次世代ポイント制度を活用したい。
・断熱性能もアップしたい。
・キッチン、浴室、洗面化粧台、トイレなどの水まわりはすべて交換したい。
・施主支給および施主工事も考えている。
このようなご要望をいただき、改修&補強プランをご提案いたしました。
意匠、構造的な計画
・駐車場スペースを確保しつつ、強度を上げていくために増設する壁や増設する梁および柱をBIMを用いて、計画段階で立体的にチェックを繰り返しました。増設する梁をカバーするため、意匠的に変化がでるところは、計画段階でお施主様と確認し合い、工事実施段階でも再確認をしていきました。
・全体イメージの検討
・骨組みの検討
・地震力に対する強度の評価をプログラムにいれて、計算して増設する壁の位置を検討委しました。
一部がスキップフロアでしたので、難しいのがモデリングでした。
通常だとスキップフロアは、耐震診断の対象外となってしまうので、力の流れを考慮してモデリングする必要があります。
それゆえ、実物を計算プログラムに入力するにあたり、いかにモデリングするかが最も重要なポイントとなります。
補強については、横からくる地震の力をどのように段違いの梁を一体化して、各耐力壁に伝達するか検討をして、補強方法を決定しました。
断熱計画
断熱計画については、下図の赤く囲った部分の1階のLDKを中心に行うことにしました。
内窓設置については、お施主様、自らが行うこともあり、本工事では実施しないことにしました。
断熱材は、高性能断熱材のネオマフォームを使用しました。この断熱材は次世代住宅ポイント制度の活用もできました。
実際に使用してみるとわかりますが、筋交があるとグラスウール系の断熱材よりも加工に手間がかかりました。
ネオマフォーム工事風景
施主支給、施主工事について
◆施主支給
施主支給の場合、工事する会社の理解が必要ですが、
注意点としては、
・工事の進行をさまたげないように現場納品を遅れないようにすること
・現場に納品するときには、施主が立ち会って、品物の状態をチェックして、傷や破損があった場合の責任を明確にしておくこと、があります。
現場との納品のタイミングは設計者を通して行い、納品の立ち合いにういては、お施主様と設計者、施工者がともに行いこの点をカバーしました。
◆施主工事
施主工事においては、現場の安全管理上の問題がありますので、工事完了後にご自身のペースでゆったりと行うのがよくあるパターンですが、今回はお施主様が電気工事士の資格を保有していたこともあり、一部、電気工事を施主様が行いました。
費用について
調査から設計、工事完了までにかかった費用は以下です。
◆インスペクション:63,000円
◆設計費;350,000円
◆工事監理費:500,000円
◆工事総額:10、140、000円
・解体工事:1,069,000円
・仮設工事:381,000円
・基礎工事:115,000円
・建材費:866,000円
・建築工事:1,162,000円
・住宅設備:1,153,000円
・設備工事:241,000円
・ガス工事:56,000円
・防水工事:109,000円
・板金工事:1,099,000円
・塗装工事:679,000円
・サイディング工事:660,000円
・内装工事:796,000円
・電気工事:132,000円
・現場諸経費:700,000円
・消費税:922,000円
※上記には、便器2台、洗面化粧台1台が施主支給となっており、金額に含まれておりません。
※設計監理費について、工事費の10%なので、100万円程度となりますが、工事監理内容を工事金額決定段階で判断して、工事監理費を50万円としました。
結果、設計監理費は85万円(税込)となりました。
スケジュール
◆インスペクション 5月初旬
◆設計期間:7月初旬~8月中旬
◆工事見積もり:8月中旬~9月下旬(見積もり調整含む)
◆工事期間:10月中旬~12月下旬
お引き渡し後・・・
お施主様自ら、内窓設置など、手を入れ続けており、新しい生活を楽しんでいらっしゃるようです。
住まいというものは、建ててから、メンテナンスなど手を入れていく必要があります。
一般的な木造住宅には、車検のような制度がないので、メンテナンスは義務ではありませんが、劣化がひどくなると構造体にまで影響がでてしまい多額の費用がかかることがあります。
普段の意識を少し・・・家に向けてみてはいかがでしょうか。
工事中の写真
*画像をクリックすると原寸で表示します。